どうしてデザイン思考なんだろう?
デザイン思考は、デイビット・ケリー氏(IDEO社、創業者)らが、その幅広い経験から生み出したイノベーションや解決策へ至るためのアプローチ手法です。
現代のデザイン思考につながる思想は、芸術と生活と産業の融合をかかげて、工芸・写真・デザイン・美術・建築など多様な分野で総合的な教育を行なった美術学校「バウハウス」(Bauhaus)に端を発するとされています。合理主義をみなおして人間の在り方、生活の在り方を問い直し、社会性や倫理性にむきおうとする姿勢は、まさにSTEAMの先駆けであるといえます。人間を大切にする社会を目指した思想は、戦後のアメリカで「デザイン思考」へと発展していき、2005年には、デザイン思考をメソッドとして広げるための場として「d.school」が、スタンフォード大学内に創設されました。
デザイン思考を身につけた人々が、シリコンバレーをはじめとする様々な国や地域でも活躍するようになり、この手法が大変注目されるようになっています。
デザイン思考は、IT業界や科学、医療といった理系の分野にだけに止まらず、飛行機の慢性的な発着の遅れの解消や、企業のカスタマーサービスの向上、キッチン用品の開発など、実に多岐にわたる分野において、その有効性が認められています。
“デザイン思考は、使う人を中心に考えた方法論です。人を中心にしたイノベーションの方法というのは、人のニーズ、テクノロジーで実現可能な事、そして、ビジネスが成功するために必要な条件という3つの要素をインテグレートしたデザイナーがよく使う手法なのです”
〜デイビット・ケリー氏
“存在する制約の中でアップグレードをする事がデザイン思考”
〜ティム・ブラウン氏(IDEO社、CEO)
図1. 論理的・批判的思考とデザイン思考の違い
徹底的にユーザーの気落ちや感じ方に寄りそって発想するのがデザイン思考です。
デザイン思考では、数多くのアイディアを出してみる事、スケッチを描いたり、流れを紙に描いたり、プロトタイプ(模型)を作ったりする事を、とても大切にしています。
思いつきを声に出してみて、手を動かして考えて、ひとまず目に見える形にしてみる。
そうすると、もっとこうしたらいいかもしれない、という発見が見えてきます。
それにさらなる改善や修正を施して、また、プロトタイプを作ってみる。
この繰り返しの中で、本当に人を中心に考えた製品や解決方法を編み出すことができるようになるのです。
STEAMとは?
今、シリコンバレーをはじめとする最先端の教育現場では、デザイン思考をクラスルームに取り入れ、Science 科学、Technology技術、Engineeringエンジニアリング、Mathematics数学といった従来の理・数・工学(STEM、ステム)分野に、芸術・デザインに加えて、哲学・文学・倫理学・史学・文化人類学などリベラル・アーツ領域の視点や手法をとりいれた「STEAM」が、将来の人材を育てる鍵として世界の注目を集めています。
デザイン思考を取り入れたSTEAM教育の特色は、グループで課題の取り組み、インタビュー、ブレーンストーミング、プロトタイプ作り、フィードバックを通じて、発想力、コラボレーション力、積極性、そして、失敗を怖がらないレジリアンス力が育つことです。
※いま世界が注目する「STEAM」とは何かもっと詳しく知りたい方は、こちら!
世界の生徒の学力を測定するPISAのテスト結果を見ると、日本の女子高校生は、数学やサイエンス科目でも世界トップの成績を誇っています。
しかし、その後、大学で技術系やサイエンス系の専攻を選択する女子学生の割合は、最低レベルに落ち込んでしまうのです。
図2. STEM分野別にみた高等教育新入学者の分布
図3. STEM各分野における女性新入学者の割合
ものづくりや実験がすきなら、女子にとっても男子にとっても、ステムは面白い分野です。これから多くの女子がステムに入っていく事で、これまでこれまでと異なる発見や発展を遂げることができる領域です。
より多くの日本の女子生徒が、良い成績を修めるだけで終わらず、勇気と自信を持ってステム分野に乗り出し、活躍していくためには、早くから人間を大切にする視点を養って、STEAMを自分の中に取り入れていくことが重要です。そのためのツールとして、デザイン思考を身につけるレーニングが有用なのです。
女の子が学びやすい環境とカリキュラムのなか、のびのびと楽しみながらイノベーション、科学、エンジニアリングに目を向けるスカイラボのデザイン思考ワークショップ。是非、挑戦してみてください。